<シャム双生児>

 僕は目を覚ました。
 隣では、僕の片割れが、眠っている。
 僕は体を起こそうとした。
 腰が繋がっているから、腕で体を支える。
 隣では、僕の方割れが、静かな寝息を立てている。
 その姿が、僕にはとても愛しく見えた。
 僕の弟。
 彼は僕であり、弟である。
 僕らは出来損ないだった。
 分かれて生まれてくるはずが、腰で繋がって。
 一つの臓器に、二人分の働きは過酷過ぎて。
 このまま繋がっていれば、僕らは二人とも死ぬらしい。
 だから、先生は僕らを引き剥がすらしい。
 でも、臓器は、一つしかない。
「ん……」
 隣で彼が小さく身じろぎをした。
 寒いのだろう。毛布を探して手を伸ばしている。
 僕は彼に、毛布をかけてやった。
 薄暗い中で、時計の音が大きく響く。
 あと数時間で、僕は彼とわかれてしまう。
 だから、今だけは一緒にいたかった。
「……あのさ、僕が、死ぬんだって」
 誰にとも無く呟いて、僕は笑った。
 彼を守ろうと知識を詰め込んだ。
 それが、僕に事実を知らせることになった。
 シャム双生児。
 片方を生き残らせるために、片方を殺す。
 大抵その片方は体が弱いほうで――この場合、僕だ。
 だから、僕は殺される。
「でも、君は、生きるんだ」
 目頭が、熱かった。
 ぽたぽたと毛布に涙が落ちた。
「……死にたくない」
 そうだよ、死にたくない。
 死にたくない。
 どうして僕が死ななきゃいけないんだろう。
 死にたくない。
 僕は死にたくない。
「……死にたくないよ」
 でも、僕は死ななければいけない。
 僕はお兄ちゃんだから。
 僕は弱いから。
 僕は。
「……今度、目が覚めたら、僕はいない」
 僕はもう死んでいる。
 君は片割れを失う。
「でも、君は、悲しまないで」
 でも、君は生きている。
 だから、生きて。
 僕の分まで生きて。
 世界を見て。
 恋をして。
 幸せになって。
「……おやすみ」
 僕は笑い、毛布に体を滑り込ませた。
 次に目が覚めることは、僕には無い。
 だから、これは、「さよなら」と同義語だった。
 さようなら、もう一人の僕。
 僕は、一生の眠りにつくよ。
 おやすみ。

           あとがき。
             小さい頃に見た、シャム双生児が頭の中にあります。
             一義足で歩く方と、脳障害を起こした方。
             どちらかが生きるためにどちらかを犠牲にしなければならない。
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