<ガムテープ>
 
 幾つもの巨大な岩と、サボテンが並ぶ褐色の大地。
 巨大な岩に隠れるようにして、三つの人影が並んでいた。
「っ〜〜」
 そのうちの一つである金髪の少年は、自分の右肘を押さえて呻いていた。
 黒髪の少女はそれを心配そうに見つめ、紺色の髪を持つ少年は冷静に見下している。
「情けない」
「るせぇっ! しゃーねーだろが俺は遠距離戦用の人形で、接近戦になったら絶対っ……不利だ」
「コガネ君、あの……腕、くっつけないと」
 少女は金髪の少年――黄金に、心配そうな顔を向ける。
 大丈夫だといいかけて、黄金は更にその顔を歪めた。
「コガネ君っ!」
「だいじょっ……桜……心配すんな。死なないから」
「でもっ……痛いんでしょ?」
「そーそっ……中の核が壊れないと死なないけど、痛みだけは純粋に『在る』から」
「何で?」
「そういうふうに出来てるから」
「……?」
「黄金、いい加減に腕をくっつけろ。桜にこれ以上心配をかけるな」
 言って、紺色の髪の少年は、左手に持っていたものを黄金に投げる。
 それは、右肘から先の、人間の腕だった。
「っ〜! 出来るかぁっ!! 左腕一本で巻ける訳が無いだろっ!!」
「巻け。お前の得意とする気力かなんかで」
「無理だろっ!!」
「……甘え垂れるな」
「それは甘えじゃねぇっ!! 当然の要求だっ!!」
「つくづく我侭な奴だな」
「ちゃうわボケェっ!!」
「ねぇ、ロクショウ君……早く、腕をくっつけないと駄目なんじゃない?」
「そうだな桜。お前の言う事は全く持って正しい」
「……オイ緑青」
「なんだ黄金」
「俺の時と態度ちがうじゃねーかっ」
「気のせいだろう」
 けんもほろろに返し、紺の少年・緑青は鞄の中からガムテープを取り出す。
 先端の半分を右腕の切断部分に貼り、もう半分を右肘に貼った。
 そうして、包帯を巻くようにガムテープを巻いていく。
「ロクショウ君、それが……応急処置?」
「ああ。我等人形は核を壊されない限り死なない。どんなに、痛くても、な」
「でも、ガムテープで……」
「何、しらねーの桜? ガムテープってさ、意外とくっつくんだぜ?」
「そうだな。しつこい。まるで何処かの鳥頭のように」
「……どっかのムッツリみたいにな」
「それだけ返せるなら大丈夫だな」
 口元に小さく笑みを浮かべ、緑青は黄金の傷口を叩く。
 黄金は顔を引きつらせ、それから笑みを浮かべて。
「テメェは大丈夫じゃねぇだろがっ!!」
 緑青の横っ腹を、思いっきり叩いた。
 今度は、緑青が顔をしかめる。
「え?」
「テメェだって怪我してるくせに」
「……いつから」
「そだな……時たま言葉に詰まる辺り」
「我も……まだ、修行が足りないな」
 顔をそらしつつ、緑青は自分の脇腹を黄金に見せる。
 その一部分が、大きく抉れていた。
「ロクショ……君」
「そんな顔をするな桜。だから見せたくなかったんだ」
「やっぱムッツリ」
「黙れ」
 黄金の手からガムテープを奪い取り、緑青はそれを自分の腹に巻いていく。
「……治せないの?」
「俺等じゃ無理。マスターんとこに『素体』はあっからー、緑青は首下とっかえないとなぁ」
「必要ない」
「でもっ」
「詰めるだけで良い。素体を取り替えるとなれば、三日は戦えない」
 桜の言葉を遮り、緑青はすぐそこにおいてあった自分の武器を握った。
 彼の背丈ほどもある、大きな日本刀を。
「確かに……そりゃイタイわな」
 黄金もそういい、立ち上がる。
 右腕にリボルバー、左腕にマシンガンを持って。
「何でっ……そこまで」
「いつだったかさー、俺らさぁ、マスターにさ、ガムテープみたいだって言われたんだよ。
「ああ、そんなこともあったな。クレアが爆笑してた」
「そーそ姐さんがさって違うっ! 問題はそれじゃねぇっ!!」
 自分で自分に突っ込み、黄金は笑った。
 緑青も、笑う。
「ガムテープみたいにしつこいんだ。粘っこくて」
「……黄金、いつもの口上……いくか?」
「とーぜんっ」
 一拍置いて、黄金は叫ぶ。
「『やるなら徹底的にっ! やられたら三倍返しっ!!』」
 緑青も、いつもからは考えられない大声で。
「『我等に喧嘩を売ったこと、今生きていることさえも』」
「「『後悔させてやろう』」」
 桜は思わず、目を瞬かせた。
 それから、笑う。
「なぁ、桜」
「我等は必ずお前を『×××××』に連れて行ってやる」
「しつこいからな」
「そうだな」
 二人も笑い、そうして。
 岩陰から、外に飛び出した。
 右肘と脇腹に、ガムテープを巻いて。
 

           あとがき。
             ガムテープって荷造りによくつかうけれども、はがすときが大変です。
             なんせ、しつこいので。
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