駅のロッカァには、魔物がすんでいる。

<コインロッカー>

 ぱさりと音を立てて、書類が床に広がった。
 五番のロッカァの扉は開いたままで、扉がゆらゆら揺れている。
 言わんこっちゃ無い。
 先程までそこには、恐らく会社員と思われる男性が立っていた。
 けれども、今はいない。
 ロッカァに食われてしまったのだ。
 駅のロッカァには、注意しなければならない。
 その灰色の扉を開ける前に、必ずノックすること。
 さもなくば――中に住んでいる魔物に、食われてしまうのだ。
 だから、このロッカァには注意しなければならない。
 私は溜息を付いた。
 きっと、あの男性は知らなかったのだろう。
 無造作に指を伸ばせば、金属の冷たさが触れた。
 背負った荷物を入れようと扉を開ける。
 ふと、私は気付いた。
 開いた扉の中に――金色に光る目があることに。
 私は暫く、それを凝視する。
 それも暫く、私を凝視する。
 そうしてそれは、笑った。
 近付いてくるのはぬらりとした赤。
 すぐに、私の世界は闇に塗り潰された。
 何処か遠くで、どさりと荷物の落ちる音が聞こえた。

 人食いロッカァには、ご用心を。

           あとがき。
            SS。だって何が潜んでるか、分からないじゃないですか。
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